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重複メッセージの防止と特許の進歩性

韓国大法院2023Hu10965判決を通じ、異なる通信網からの重複受信、請求項の解釈と後知恵を排した進歩性判断を検討します。

アプリとSMSの重複処理に関する進歩性判例

請求項ごとに分かれた結論

韓国大法院は2026年6月25日、事件2023Hu10965で無効審判請求人の上告を棄却しました。対象は、データ網と公衆網を用いて複数の宛先へ同じ内容を送る同報メッセージの送信方法です。アプリとSMS等を通じて同一メッセージが届いた場合の端末側の処理が問題となりました。

特許審判院は請求項3~11の進歩性を否定しましたが、特許法院は2023年8月17日の2023Heo10095判決で請求項3~8に関する審決を取り消し、請求項9~11については無効判断を維持しました。大法院が是認したのは上告対象の判断であり、全請求項の有効性が一律に認められたわけではありません。

処理の順序が技術的意味を持つ

本件のデータ網はWi-Fi、3G、LTE等を介してメッセンジャーアプリに届ける経路、公衆網はSMS・MMSを届ける経路を指します。データ網を優先し、必要に応じて比較的費用の高い文字メッセージの経路を使う構成が前提でした。

請求項3の追加処理は、公衆網で送信した後、そのメッセージを表示する前に、同じメッセージをデータ網経由でアプリが受信したか確認するものです。確認時点、受信経路、比較対象の同一性が一体として特定されています。従属請求項には二重受信の表示、無効化、削除等の処理も含まれていました。

図2:公衆網送信後にデータ網での受信を確認する処理
図2:公衆網送信後にデータ網での受信を確認する処理

文言を技術的な文脈で読む

先行技術と比較すべき発明は請求項から確定します。明細書や図面に特定の実施形態があることを理由に、請求項を任意に限定・拡張することはできません。他方で、文言だけを技術的な説明から切り離して読むのも適切ではありません。

大法院は、文言の通常の意味を基礎に、発明の説明と図面を参酌して技術的意義を客観的・合理的に把握すべきとしました。そして、公衆網での送信後にデータ網で同一メッセージを受信したか判断する、という原審の解釈を是認しました。

既知の機能を並べるだけでは足りない

先行発明1はアプリの有無によりインターネット網と移動通信網を使い分けるもので、両経路からの重複表示を解決する構成を示していません。先行発明2はメッセンジャー送信に失敗した場合にSMSへ切り替えます。成功通知の遅れで例外的に重複送信が起こり得ても、その可能性だけで本件の解決手段が開示されたとはいえません。

先行発明3は同じSMS網内で識別情報と受信履歴を照合して重複を除く技術です。アプリとSMSの異なる形式を比較するには、何をもって同一とするか、その情報をどう抽出するかも必要です。経路選択と重複除去を列挙するだけでは、その差を容易に埋められる根拠になりません。網内の再送に伴う重複除去と、端末での重複表示の制御も区別されました。

出願時の知識から到達できたか

進歩性は、証拠に基づく先行技術の内容、発明との差異、当業者の技術水準を踏まえ、出願時に判断します。完成した発明を知ったうえで、その解決手段に合う要素を過去の文献から集める後知恵は許されません。

大法院は、先行発明1~3によって請求項3の進歩性は否定されず、その特徴を含む請求項4~8も先行発明1~3又は1~5によって否定されないとした原審を維持しました。原審を覆す新たな組合せ論を示した判決ではありません。

ソフトウェア発明の実務への示唆

送信、受信確認、重複除去といった機能名だけでなく、何が起きた後に何を比較し、その結果が次の処理へどうつながるかを具体化することが重要です。

出願時には処理順序と比較対象を請求項・説明・図面で整合させます。無効を争う場面では各構成の記載箇所に加え、当業者が構成間の差をどう埋められたかを説明すべきです。権利者側も、変更が単なる置換にとどまらない理由を具体的に示す必要があります。

原図の表記と形状を保持しています。資料の内容は本文で説明しています。

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