
請求項1の無効を争った事件
韓国特許法院は2026年7月9日、2025Heo10655事件で、特許権者の各被告に対する請求をすべて棄却しました。特許審判院は2025年12月5日、2025Dang2653事件で特許第2220038号の請求項1を無効としています。出願日は2020年7月16日です。判断は請求項1に関するもので、サクソフォン修理技術一般の評価ではありません。
キーカップ内の空間を充填する構成
本件はパッドとキーカップの間の内側空間に着目した技術です。パッドの変形によりトーンホールとの密着が損なわれるため、内部の接着空間と外部のトーンホール側の隙間は区別する必要があります。請求項1には、キーの背面を60~95℃の熱風で加熱してパッドを分離し、既存接着部と同成分の固形接着剤を挿入し、再加熱で内部全体を充填した後、常温で硬化させる工程が記載されています。
完成品は内部空隙のないパッド・固化した接着剤・キーの構造です。製法の文言と、その製法で特定される物を対応させて読む必要があります。



マニュアルと動画が示す内容
先行発明1は2018年9月1日刊行のStephen Howard著Saxophone Manual、先行発明2は2020年4月10日に公開された動画でした。マニュアルは、中央に小さなたまりができる量の接着剤を使用し、パッドを押して空気の隙間を除き、トーンホールに密着する角度を調整する作業を示しています。動画も充填、針による空気抜き、水平調整を示していました。
同じ「全体充填」という表現がなくても、目的と作業内容から容易に導けるとされました。「薄い膜」は接着剤を溶かす途中の状態であり、縁だけの接着を意味しません。穴のあるパッドスリックも革を平らにする道具で、周縁だけを接着する根拠とはなりませんでした。


熱風・温度・組立順序の違い
マニュアルは明示的な温度を伴わないトーチ加熱を示しており、60~95℃の熱風との差は認識されました。しかし、明細書には熱損傷を避けつつ接着剤を溶かすことを超えた技術的意義や臨界的効果が記載されていません。マニュアルも過熱を避け、穏やかに加熱するよう教示していました。
キーが組み付けられた状態で接着剤片を入れてから加熱する記載もありました。耐熱性、寸法、加熱時間、道具を考慮すれば、先に溶融するか、部材間に固形接着剤を置いてから溶かすかは適宜選択でき、主張された閉鎖空間での工程差は決定的ではありませんでした。
製法から特定される物を比較する
請求項1は製造方法が記載された物の発明です。各作業を独立した相違点と見るのではなく、完成品の構造・性質を先行技術と比較します。空隙のないパッド・接着剤・キーの構造は実質的に開示されており、主張された製法による構造・性質の違いも認められませんでした。
出願では製法上の限定と完成品の特徴、効果の根拠を結び付けることが重要です。マニュアルや動画も日時と内容が立証されれば先行技術となり得ますが、存在するだけで無効になるわけではありません。IPLEXは請求項作成、先行技術評価、韓国の無効紛争を支援します。
原図の表記と形状を保持しています。資料の内容は本文で説明しています。
