
技術的な争点
韓国特許法院2026年7月16日判決(2025Heo10512)は、特許第2068513号「多結晶金属酸化物、その製造方法及びそれを含む製品」を扱います。高価なコバルトを抑えつつ正極材料を安定させる技術で、請求項1はリチウム・ニッケル・酸素を含む結晶子の間の粒界に高濃度のコバルトを配置します。2025年7月31日の無効審決に対し、権利者は「粒界」を結晶方位が異なる結晶子間の通常約0.5~1nmの境界として解釈すべきと主張しました。

数値と図面が示す広い領域
明細書は厚さ1~200nm、元素分布図では50~150nm・平均約100nmと説明していました。法院は課題とEDX図を併せ、「粒界」を厚さ1~200nmのコバルト濃縮領域と解釈。説明から請求範囲を恣意的に拡張・縮小する一般則ではありません。先行文献・特開2003-59489(2003年2月28日公開)の一次粒子表面付近約50nmの濃縮領域はこの意味に含まれ、焼結されたリチウム・ニッケル・酸素の粒子構造も対応するとされました。

請求項ごとに異なる無効理由
請求項1・3・11は先行発明5により新規性・進歩性を欠き、2・4~8・10は進歩性を欠くとされました。数値範囲には通常の選択を超える技術的意義の記載が不足していました。保護被膜を加えた9とそれを用いる電池の12は先行発明5・4の組合せにより、製造方法13は対象粒子に応じて5単独又は5・4により進歩性が否定。法院は無効を維持しましたが、13項すべてについて新規性欠如だけを理由にしたのではありません。

実施可能性・明確性とは別の判断
濃度範囲とEDX測定によって濃度差を確認でき、「実質的に均一」も約3原子%の分布から理解できるとして、実施可能性・明確性の攻撃は退けられました。先行発明1・2は粒界の濃縮を十分示さず、比率や工程も相違。実務では独自の用語を領域・寸法・測定方法と一貫させ、異なる名称でも構造が対応するかを確認し、数値範囲の技術的意味を説明します。説明の明確さと新規性・進歩性は別問題です。
原図の表記と形状を保持しています。資料の内容は本文で説明しています。
