
チリへの進出計画と併せて商標を準備する
チリは、韓国企業が中南米への進出を検討する際の選択肢の一つです。韓国・チリ自由貿易協定を背景に、食品、化粧品、自動車、電子製品などの分野で取引が行われています。輸出や現地の流通網を通じた販売を計画する場合は、ブランド保護も事業日程に組み込む必要があります。
韓国で取得した商標権が、そのままチリでも認められるわけではありません。販売開始後の対応に委ねず、進出計画の段階で先行商標を調査し、実際に使用する標章と事業範囲に応じた現地出願を検討します。
出願前に標章と指定商品・役務を確定し、ニース分類に基づく区分を検討します。区分番号だけで判断せず、現地で販売・提供する商品や役務が指定内容に含まれているかを確認することが大切です。
チリ産業財産庁(INAPI)の一般的な手続は、出願・方式審査、公告、異議申立て・実体審査、登録許可・登録料納付、登録証発行という順に進みます。方式上の不備については、原則として通知から30営業日以内に対応します。

公告から登録までの期限と所要期間
方式審査を通過した後は、公告承認の通知から20営業日以内に、出願人が官報Diario Oficialへの公告を申請します。公告日から30営業日は、第三者が異議を申し立てることのできる期間です。
実体審査では、識別力や先行商標との抵触などの登録要件が検討されます。拒絶理由が通知された場合は、原則として30営業日以内に応答します。意見や補正の内容は、実際の通知で指摘された事項に応じて検討します。
登録が許可された場合、通知から60営業日以内に登録料を納付し、その証明を提出する必要があります。出願受付、公告、登録許可と登録手続の完了は別の段階であり、それぞれの期限を管理します。
INAPIが公表した2026年7月の実績では、新規商標の平均処理期間は約5.5か月、審査上の指摘や異議申立てのない出願では約4.1か月でした。過去の処理実績を示す平均値であり、個別案件の登録時期を保証するものではありません。

特徴1:公告は出願人が手配する
チリでは、方式審査を通過しただけで公告が自動的に完了するわけではありません。出願人が公告を申請し、公告費用を支払う必要があります。この作業を出願後の予定に明確に組み込みます。
20営業日の公告申請期限を徒過すると、出願が提出されなかったものとして扱われることがあります。公告の承認を受けたことと、公告の申請を実際に行ったことを区別する必要があります。
実務では、出願書類の提出に加え、公告申請、費用の支払い、実際の公告完了をそれぞれ確認します。公告日は異議申立期間の起算点でもあり、その後の手続を管理する基準となります。
営業日の計算には、チリの休日を含む現地の暦を用います。公告の担当者、費用の支払方法、通知の連絡経路をあらかじめ定めておくことが、手続の漏れを防ぐうえで有用です。
特徴2:未登録商標の先使用に基づく保護
チリでは、未登録商標であっても、後願の出願前から国内で現実かつ実効的に使用されていれば、法定要件の下で保護される場合があります。単に使用開始が早いと主張するだけで保護が認められるものではありません。
同一又は混同を生じるほど類似する後願商標に対し、異議申立てや登録無効の手続で先使用を主張できます。その際は、商品・役務との関係、混同のおそれ、使用の事実と証拠を、適用される法定要件に沿って検討します。
先使用を理由に後願が拒絶され、又は登録が無効とされた場合、先使用者には自らの商標を出願するための90日が与えられます。その期間に出願しなければ、拒絶又は無効の対象となった出願人に、続く90日間の優先的な出願機会が認められることがあります。
したがって、先行調査は登録簿の確認だけで終えず、チリ市場で使用されている標章やその使用経緯も検討することが望まれます。先使用に基づく対応では、有利な判断を得た後の出願まで予定に組み込む必要があります。

特徴3:外国登録の周知・著名商標
チリの産業財産法には、外国で登録された周知・著名商標と同一又は混同を生じるほど類似する後願商標について、一定の保護を認める規定があります。外国の商標権者は、要件を満たす場合、異議申立てや登録無効の手続でこれを主張できます。
検討の基礎となるのは、外国登録と周知・著名性を裏付ける事実です。商品・役務の関係や混同のおそれなどの要件も確認する必要があり、海外で有名であるという説明だけでは足りません。
この規定により後願が拒絶され、又は登録が無効とされた場合は、原則として90日以内にチリで登録出願を行います。出願しないと、従前の出願人にさらに90日間の優先的な出願機会が認められることがあるため、手続とその後の出願を一体で準備します。
海外での知名度によって、すべての商品・役務について自動的に保護されるわけではありません。先使用や周知・著名商標に関する規定は現地出願を省略してよいという意味ではなく、実際の事業に対応する権利化が必要です。
費用、制度変更と更新の留意点
一般の商品・役務の商標について、官庁手数料は出願時に1区分当たり1 UTM、登録時に同2 UTMです。UTMはチリの月次税務計算単位であり、一定の外貨額を示すものではありません。官報公告料と現地代理人費用は別途確認し、総予算に含めます。
2022年5月9日施行の改正により、商業施設を対象とする商標の新規出願は廃止されています。従前の登録には経過措置が適用され、更新時に第35類のサービスマークへ転換するなどの対応が必要です。
チリの商標登録の存続期間は登録日から10年で、更新が可能です。既存登録の譲受けや更新では、登録の種類、指定範囲及び適用される経過措置を併せて確認します。
チリに住所を有しない出願人は、チリに住所を有する代理人を選任する必要があります。先行調査、指定商品・役務、公告・登録の期限を製品の発売予定と併せて準備してください。チリをはじめとする海外商標出願については、IPLEX特許法律事務所にご相談いただけます。
原図の表記と形状を保持しています。資料の内容は本文で説明しています。
