
請求権の発生と10年の消滅時効
韓国最高裁は2026年6月25日、2025Da217407事件で、使用者に承継された職務発明の補償金をいつから請求できるかを検討しました。職務発明とは、使用者の業務範囲に属し、その成立につながる行為が従業者の現在又は過去の職務に属する発明です。特許を受ける権利や特許権等の承継により、正当な補償を受ける法定の権利が生じ得ます。
最高裁はこの請求権に10年の消滅時効が適用されるとしました。重要なのは、通常は使用者への権利承継時に生じる請求権と、実際に支払を求められる時点を区別することです。社内規程が支払要件や手続を定めることで支払時期を定めている場合、具体的な暦日が書かれていなくても、その到来時が問題となります。
特許譲渡の経緯と補償制度
原告は2000年から2018年まで研究員として勤務し、携帯端末のソフトウェア開発等を担当していました。会社は近接タッチ検知機能を備えた携帯端末の職務発明を承継し、2008年6月26日頃に韓国で3件の特許を出願した後、韓国出願の優先権を主張して米国・欧州にも関連出願を行いました。2015年9月30日には、本件を含む12件のファミリー特許を他社へ譲渡する契約を締結しました。
社内規程は、登録権利の製品適用、戦略特許、ロイヤルティ収益、ロイヤルティ削減などの補償を区別していました。有償譲渡、実施許諾、権利行使による具体的利益等の要件が生じると、職務発明補償審議委員会の審議・議決等を経て支払う仕組みです。研究員は主位的に法定補償を、予備的に社内規程に基づく補償を請求しました。
原審の時効判断が覆された理由
特許法院は2025年8月21日の2022Na1708判決で両請求を棄却しました。規程は金額算定や支払手続を定めるにすぎず、支払時期の定めではないとして、2008年6月26日から10年が経過したと判断しました。また、規程によって別個の金銭債権が生じるものでもないとしました。
最高裁は支払時期の点で判断を異にしました。補償類型ごとの要件発生と所定の手続を経て支払う仕組みは、不確定期限としての支払時期を定めたものに当たり得ます。特段の事情がなければ、従業者はその支払時期が到来した時点で権利を行使できます。権利承継だけを基準にすべての補償の時効を計算するのではなく、適用規程と実際の譲渡・許諾・利益発生を結び付けて検討する必要があります。
別個の約定債権や支払額を確定した判決ではない
一方、社内規程は通常、法定請求権を具体化・補充するもので、特段の事情なく別個の約定債権を創設するものではないとの判断は維持されました。既存の権利の支払時期を定めることと、二つ目の権利を設けることは別問題です。それでも両請求は同一の補償という目的を持ち、実質的に選択的な関係にあったため、原審判決全体が破棄され、差し戻されました。
特定額の支払が確定したわけでも、全補償類型に共通の起算日が定められたわけでもありません。特許の有効性や侵害も判断対象ではなく、委員会が審議しなければ時効が永遠に進行しないと一般化することもできません。実務では規程と改定履歴、類型ごとの要件・手続、譲渡・実施許諾・利益の資料を時系列で整理します。従業者は出願や退職からの年数だけで判断せず、会社は規程の文言と運用・支払記録の整合性を確保することが重要です。
原図の表記と形状を保持しています。事件の事実関係と裁判所の判断は本文で説明しています。
