
原液の輸出と完成ワクチンの国内生産
韓国大法院は2025年5月15日、2025Da202970事件で上告をすべて棄却し、特許法院2024年12月3日判決(2023Na10914)を維持しました。原告は特許権者と専用実施権者です。対象の請求項1は2017年3月21日に訂正され、肺炎球菌ワクチン用の13価免疫原性組成物を規定していました。
被告は韓国で13種類の多糖体・タンパク質結合体原液を製造してロシア企業に輸出し、同社が混合して組成物を完成させました。これとは別に、被告は韓国で完成ワクチンを4回生産し、研究・試験用に無償提供していました。両行為は分けて評価する必要があります。
直接侵害――混合は単なる仕上げではなかった
請求項は、そのまま人体へ投与できる最終剤形までは要求していません。製剤化等を経ればワクチンに使用できる程度に、13血清型すべてに免疫原性を示すことが必要です。韓国特許の属地主義に加え、各構成要素とその有機的結合がそろっているかが問題となります。
国内で主要構成がすべてそろい、一つの主体に輸出して極めて軽微な最終加工だけを行う予定で、既に発明の作用効果を実現できる場合には、国内生産と同視される余地があります。ただし厳格な判断が必要です。本件では投入量、混合比率・順序、pH、温度、撹拌速度・時間が免疫原性に相当な影響を与えます。各原液の生産だけでは13価の効果を実現する段階に達せず、直接侵害は否定されました。
間接侵害――完成品の生産地にも着目
韓国特許法127条1号は、特許物の生産にのみ用いる物の生産等を侵害とみなします。ただし、ここでいう生産は国内の生産です。完成品の生産が国外なら、その前段階が国内で行われても同号の間接侵害は成立しません。
本件の個別原液はすべて輸出され、海外で完成品になりました。間接侵害が否定された理由は、この属地的な要件です。直接侵害の理由とは区別すべきであり、輸出工程であれば一律に安全という意味でもありません。
国内の4回の生産には研究・試験例外を適用
2018年11月7日から2020年5月27日までに生産された4回の完成ワクチンは、請求項1の範囲に属していました。第1・2・4回はロシアでの非臨床又は臨床試験、第3回は製造技術の移転を確認する分析試験が目的でした。無償で研究・試験用、非販売・非流通用と表示され、商業供給や別の完成品生産を認める資料もありませんでした。
韓国特許法96条1項1号の研究・試験例外では、権利者の正当な独占的利益を不合理に害しないかも考慮します。大法院は本件では例外が適用されるとしました。研究用という名称を付けるだけで、あらゆる生産が許されるわけではありません。
結論と実務上残しておくべき資料
不正競争の主張も退けられました。個別結合体の生産は公共領域に属し、保護対象となる成果と仮定しても、不公正な無断利用を認める証拠が不足していたためです。本判決は特許自体を無効にしたものではありません。
各構成要素・作用効果がどの国の工程で実現されるか、最終工程が技術的に重要かを資料で示すことが大切です。試験計画、数量、提供先、用途表示、実際の使用を記録し、販売・流通分と区別することも有用です。これは本件から得られる実務上の示唆であり、個別行為の許否は別途検討が必要です。
原図の表記と形状を保持しています。事件の事実関係と裁判所の判断は本文で説明しています。
