ブラジルへの事業展開に当たっては、市場戦略と併せて商標権の確保を検討することが重要です。ブラジルは原則として先願主義を採用し、出願公開、異議申立て、実体審査を経て登録の可否が判断されます。出願前には、ポルトガル語による手続、指定商品・役務の記載、先使用者の権利、登録後の使用管理を確認しておく必要があります。
ブラジル商標出願から登録までの流れ
手続は通常、出願、方式審査、産業財産公報(RPI)への掲載、異議申立期間、実体審査、登録の順に進みます。審査・登録を担当するのはブラジル産業財産庁(INPI)です。
1. 出願
出願時には、保護を求める商標と指定商品・役務を記載します。ブラジルはニース国際分類を採用し、INPI独自の分類ガイドも提供しています。事業で使用する商品・役務と出願内容が適切に対応しているかを確認します。
2. 方式審査と出願公開
INPIは、出願人情報、商標の表示、優先権、代理人、指定商品・役務、添付書類などの方式上の要件を確認します。要件を満たす出願はRPIに掲載されます。不備がある場合は補正を求められることがあり、指定された期間内の対応が必要です。
3. 異議申立てと出願人の答弁
第三者は出願公開から60日以内に異議を申し立てることができます。異議申立てがあった場合、出願人はその通知の公表から60日以内に答弁を提出できます。申立期間と答弁期間は別の期間であるため、RPIの公表日を確認して期限を管理することが重要です。
4. 実体審査
異議申立ての段階を経た後、INPIは先行商標との抵触や産業財産法(LPI)上の登録拒絶事由を審査します。実体審査で発せられる補正等の要求には、原則として60日以内に対応します。出願当初の方式上の不備とは適用される期限が異なる場合があるため、通知の種類を確認する必要があります。
5. 登録の許可・登録と拒絶に対する不服申立て
現在の手続では、登録が許可されると、その段階で別途登録料を納付することなく自動的に登録されます。拒絶決定に対しては60日以内に不服を申し立てることができます。登録までの期間は、審査の待ち状況や異議申立て、審査対応の有無などによって変わるため、一律には見積もれません。
ポルトガル語の書類と指定商品・役務の準備
INPIに直接提出するブラジル国内手続の書類は、ポルトガル語を前提として扱われます。外国語の書類にはポルトガル語訳が必要になる場合があります。他国向けに作成した英語の出願資料をそのまま流用せず、ブラジルの実務に合わせて整えることが重要です。
INPIはニース国際分類に加え、事前承認された名称と補助リストを運用しています。承認済みの名称を用いる場合、その分類の適合性について個別の審査を省くことができます。一方、自由記載では明確かつ正確な表現が求められ、曖昧又は抽象的な記載は問題となり得ます。
INPIは2025年から、曖昧な名称や補正要求を減らすため、事前承認リストの一部を見直しています。英語の商品名を単にポルトガル語へ直訳するのではなく、現地で認められる名称であり、実際の商品・役務を正しく表しているかを確認することが必要です。
先使用者の権利も確認する
先願主義だけで判断できない点にも注意が必要です。関連する優先日又は出願日より前に、ブラジルで同一又は類似の商標を同一・類似・関連の商品又は役務について善意で6か月以上使用していた者は、登録に関する優先的な権利を主張できる場合があります。先行商標の調査と併せて、現地での使用実態を確認することが重要です。
登録後の使用と不使用取消し
登録から5年が経過すると、不使用を理由とする取消請求の対象となり得ます。権利者は、ブラジルでの使用又は不使用についての正当な理由を立証する必要があります。立証できなければ全部又は一部が取り消される可能性があり、使用が認められない指定商品・役務のみが部分的に取り消される場合もあります。
登録証を取得するだけでなく、事業で適切に商標を使用し、その事実を記録・保管することが重要です。実際に用いる商標と対象となる商品・役務を踏まえて、登録後の権利を管理します。
存続期間・更新と継続的な権利管理
ブラジル商標権の存続期間は登録日から10年で、その後も10年単位で更新できます。長期的な事業展開を見据え、更新期限と使用状況を継続して管理することが必要です。出願前の先行商標調査と指定商品・役務の検討から、異議申立て・審査への対応、登録後の更新・使用管理までを一連の実務として捉えることが重要です。
