
二つの争点を区別して読む必要がある判決
韓国大法院は2025年6月26日、降圧用の医薬組成物に関する2023Hu11562事件を判断しました。原審は特許法院2023年11月30日判決(2022Heo4826)です。対象発明が特許権の権利範囲に属するかを確認する手続であり、侵害損害賠償を最終的に命じた判決ではありません。
大法院は自由実施技術の抗弁を退けた点では原審を是認しましたが、請求項の解釈には誤りがあるとして原判決を破棄し、差し戻しました。抗弁が成立しないことと、原審の権利範囲判断が正しいことは同じではありません。
公知例外の対象資料を抗弁に再利用できるか
本件では韓国旧特許法30条1項の公知例外、すなわち一定の公開を新規性等の判断から除外する制度が問題となりました。先行発明1は特許成立時にその適用を受けていました。自由実施技術の抗弁は、対象発明が公知技術から当業者により容易に実施でき、特許発明との対比によらず権利範囲外となるという主張です。
大法院は、公知例外の適用を受けた同じ公開内容を、単独でも他の資料との組合せでも、この抗弁の根拠に用いることはできないとしました。そうでなければ例外制度の趣旨を別の経路から失わせるためです。独立した別の先行技術による抗弁まで否定したわけではなく、本件では残る資料だけでは抗弁を基礎付けられませんでした。
クレームの文言を基礎に技術的意味を確定する
権利範囲は請求項の記載を客観的に理解して定め、明細書の説明や技術的な文脈を参酌します。ただし、明細書を参酌することと、請求項に記載された内容を実質的に拡張又は限定することは区別しなければなりません。
医薬品では、塩、その水和物、有効成分本体は用量を表示する上で互換的な概念ではありません。数値がどの化学形態の質量を示すのかを確定した後に、対象組成物との対比へ進む必要があります。
30mgと5mgは何の質量か
請求項1の記載は、フィマサルタンカリウム塩30mg又はその水和物30mgと、アムロジピンベシル酸塩5mgでした。水和物30mgと、その中にカリウム塩30mgを含む量の水和物とは異なります。同様に、アムロジピンベシル酸塩5mgを、遊離塩基としてのアムロジピン5mgに置き換えることはできません。
明細書はフィマサルタンカリウム塩、水和物、三水和物を区別し、アムロジピンとそのベシル酸塩も書き分けていました。試験例や製造例では、フィマサルタンカリウム塩三水和物とアムロジピンベシル酸塩を基準としていました。これらは請求項に明記された化学形態に沿うもので、有効成分換算量への読み替えを裏付けるものではありませんでした。
解釈の誤りにより均等の判断もやり直しに
原審は、最初の量をカリウム塩30mg又はその量の塩を含む水和物、後の量をアムロジピン5mgと解し、その前提で均等性を判断していました。大法院は、この解釈が請求項の文言及び明細書に整合しないと判断しました。
請求項1の誤りは、その従属項又は医薬用途以外は同じ構成を有する請求項4及び12~14の検討にも及びました。差戻しによって対象発明の権利範囲外が確定したわけでも、侵害が最終確定したわけでもありません。正しい構成要件を前提として対比する必要があるという結論です。
公開履歴と用量の基準を別々に点検する
自由実施技術の抗弁を検討する際は、どの公開に公知例外が適用されたのかを出願経過から特定し、独立した先行技術と区別します。公開日を一覧にするだけでは、抗弁に利用できる資料の範囲までは分かりません。
医薬クレームでは、請求項・明細書・実施例の間で化学形態と用量の基準を確認し、その後に対象組成物と要素ごとに対比します。適切なクレーム解釈上の根拠なしに、塩又は水和物の量を有効成分量へ換算して読むべきではありません。本件は、ある抗弁への反論が成功しても、正確な権利範囲の解釈は別途必要であることを示しています。
原図の表記と形状を保持しています。事件の事実関係と裁判所の判断は本文で説明しています。
